ヘッジ取引
2025年9月23日
はじめに
これまでも記事にしている通り、私の株式投資はFIRE生活を支えるための配当狙いであり、株価の上がり下がりからの収益(キャピタルゲイン)の獲得を目指した投資は行っていません。
しかし、新規投資や銘柄入れ替えのタイミングを計るために相場動向の分析は行っています。そして、先日「相場の波を生み出す力」という記事のなかで今後の株価について「2025年4月から9月にかけて外国人投資家の買いもあり大きく上げていた株価は、過熱気味になったため10月より小反落。2~4か月かけて日経平均は4万円付近まで下落したのちに株価は反転し、5万円を突破するまで力強く上昇」という予想を立てました。もちろん個人的見解であり責任はとれないとの注釈は入れているものの、ネットでそのような予想を公開している以上は自らその予想に基づいたアクションを取らないのも言いっぱなしで無責任と思い、このたびヘッジ取引をすることを思い立ちました。
ヘッジ取引
ヘッジ取引とは、現物の価格変動リスクを先物等の売買によって回避する取引のことです。
今回のケースでは、日経平均が2~4か月先に1割程度下落することをリスクシナリオとしています。したがって、日経平均が下落した際に利益が出るような取引をすることで、リスクシナリオ通りが実現した場合に現物株式に生じる評価損を緩和することをヘッジ取引の目標とします。
一方で念頭に置くべき欠点として、株価が上昇した場合にヘッジ取引側で損失が発生します。
実際の取引手段としては、「先物売り」や「信用売り」といった売りポジションを取るのが一般的です。
実際の取引手段
特定の個別株式のヘッジ取引であれば、その株を信用取引で売るのが直接的な手段です。今回は個別株ではなく保有株全体リスクヘッジなので、日経平均やTOPIXといった株式インデックスの売りで対応することになります。日経平均やTOPIXという個別株はないのですが、これらインデックスに連動するETF(上場投資信託)があるのでその信用売りというのがとりうる一つの手段です。
なお、プロ投資家であれば日経先物やTOPIX先物の売りという選択肢もありますが、先物取引には証拠金維持や限月交代への対応といった高度な管理が求められるため、個人投資家が利用するにはハードルが高いです。
もう一つの選択肢として、インバース型のETFがあります。インバース型ETFとは、参照元のインデックスとは反対の値動きをする商品です。例えば、日経平均インバースは日経平均が10%値上がりしたときに、10%値下がりするETFです。信用取引は怖いので手を出したくないがヘッジはしたいという方には、インバース型ETFの現物購入は有効な手段です。話がややこしくなるのですが、インバース型ETFを信用買いすることも可能です。
話をもう一段ややこしくしてしまうのですが、レバレッジ型ETFも選択肢に挙げられます。レバレッジ型ETFは、参照する株価指数の2倍の値動きをする商品です(理論的には3倍だろうが10倍だろうが組成可能ですが東証で扱っているのは2倍だけ)。また参照元の株価指数と同方向に2倍値動きするレバレッジ・インデックス型と逆方向に2倍値動きするレバレッジ・インバース型の2種類があります。例えば、日経平均が10%値上がりした場合、レバレッジ・インデックス型は20%値上がり、レバレッジ・インバース型は20%値下がりします。
リターンが2倍であればリスクも2倍のハイリスクな商品と思われたかもしれません。しかし、ヘッジしたい取引量が決まっているのであれば、通常の1倍型商品の半分の金額だけ購入すればよいので資金効率が良くなるという効果があります(例えば日経平均 1,000万円分をヘッジしたい場合、1倍型であれば1,000万円の購入が必要だが、2倍型であれば半分の500万円を購入すれば同じ効果が得られる)。
色々な選択肢を挙げましたので以下にまとめました。商品ごとの注意点も合わせて記しています。信用取引に伴う一般的な注意点は様々でありここには書ききれなかったので、恐れ入りますが別途確認をいただければと思います。
選択肢 | 注意点 |
① インデックス型(1倍)の信用売り | 証拠金管理が必要。貸株料が発生。 |
② インバース型(1倍)の現物買い | 購入時に資金が必要。 |
③ インバース型(1倍)の信用買い | 証拠金管理が必要。金利が発生。 |
④ レバレッジ・インデックス型の信用売り | 証拠金管理が必要。貸株料が発生。リスクが2倍。 |
⑤ レバレッジ・インバース型の現物買い | 購入時に資金が必要(1倍型の半分)。リスクが2倍。 |
⑥ レバレッジ・インバース型の信用買い | 証拠金管理が必要。金利が発生。リスクが2倍。 |
⑦ 先物売り | 証拠金維持や限月交代対応など高度な管理が必要。 |
私の選択
選択肢がたくさんありあって迷うところです。
私は以下のとおり絞り込みましたので、ご参考まで。
・先物取引(⑦)は、日々の管理が大変でハードルが高いため却下
・現物買い(②、⑤)は、購入するだけの余裕資金がないので却下
・信用取引に関しては、売りの場合は貸株料、買いの場合は金利という残高比例のコストが発生。よって2倍型にすればこれら残高比例のコストを半減できるため、1倍型(①、③)を却下
そして最終候補として残ったのが「④レバレッジ・インデックス型の信用売り」と「⑥レバレッジ・インバース型の信用買い」。
信用取引は様々なコストがかかるので、信用売りと信用買いでどちらがコストを抑えられるか分かりません。
また、両者ともに日経平均の2倍の値動きをすることを目指しているはずですが、期待通りに動かず多少のずれが生じます。いくらコストが安くても、ずれが大きいとヘッジ取引手段としては不適切です。レバレッジ・インデックス型とレバレッジ・インバース型でどちらがずれが小さいか分かりません。
よって、今回は④と⑥を半々で取引することにしました。
具体的には以下の内容・ルールで取引を開始しています。
・④レバレッジ・インデックス型は「1570 NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」(以下、日経平均レバレッジ)を選択
・⑥レバレッジ・インバース型は「1357 NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信」(以下、日経平均ダブルインバース)を選択。
・日経平均レバレッジ、日経平均ダブルインバースともに額面約500万円ずつ投資。日経平均レバレッジは信用売り、日経平均ダブルインバースは信用買い。
・9月22日に取引開始。損益にかかわらず最長で12月下旬には取引を終了する。
・ただし、それ以前に日経平均が4万円まで下落したら、目標達成で利益確定させる。
・逆に日経平均4万8千円まで上昇したら損切りする
取引の実際
さて取引を始めることにした9月22日は、始値から前日比で大きく上昇しており、売りポジションを構築するには良い条件です。
両商品を横並びで比較するために取引開始時をそろえたかったのですが、手入力で発注している以上数分間のギャップが生じてしまい、多少初期条件が異なったものになってしまいました。
さて、3時30分の取引終了をまってこの日を結果(以下参照)をみると、取引開始時から若干値段が下がったため、数万円の評価益(j列)が出ました。

数値の羅列で見にくく恐縮ですが、この表で最も重要なのは「k列ヘッジ取引の損益率」と「n列日経平均の損益率×2」の比較です。両者の符号を反転させた数値が近いほど、ヘッジ取引が有効に機能しているといえます。
1日で早くも 0.01%程度の差が生じているは、諸経費の影響です。
両商品合計で約1,000万円の売りポジションを立てました。2倍のレバレッジをかけているので、日経平均が 10%上がるとヘッジ取引側で 20%(約200万円)の損失となります。もしそうなればかなりの痛手ですが、このとき現物株式側ではそれ以上の利益が出ているはずなので、その一部を実現させて相殺するつもりです。
これから3か月、気を引き締めて値動きを注視するとともに両商品の違いをモニタリングしていきたいと考えています。
そしてその成果を分析し、またこの場でお披露目できればと思います。