2024年度中間決算
2024年12月15日
早いもので、年の瀬が近づいてきました。
今年もいろいろな出来事がありました。
年初には新NISA導入と大幅な株価上昇。8月5日には日本株式市場の過去最大の下落と急回復。その後は日本の衆議院選挙、アメリカ大統領選挙と大きな政治イベントがありましたが、株価はあまり反応せず年末を迎えようとしています。
以前にも記事にした通り、ここ10年の株価上昇は企業業績の成長を伴うものであり、いまの株価は割高でも割安でもない妥当な水準と判断しています。そして、引き続き株価が上昇するためには更なる業績の伸長が必要と述べました。
その観点から来年3月期の決算に注目しているのですが、その前哨戦として中間決算が出そろいましたので分析してみました。
中間決算状況
こちらの表が、以前に高利回り・安定成長企業として紹介した35社についての中間決算※の対前期比です。
※12月決算企業は第3四半期決算、6月決算企業は第1四半期決算
残念ながらどの企業も業績が伸びているというわけではありません。好不調まちまちですね。
なお、上場企業の中間決算における利益成長率は 8.5%とのことです(NHK News)
この表から読み取れる特徴は以下の通りです。
・売上を伸ばしている企業が多いが、利益も伸びている企業は半分程度。
・安定成長スコア9点以上の企業は、8点以下の企業よりも総じて順調。
● 減益の要因
私としては安定成長企業を選別したつもりが、中間決算とはいえ大きく業績を悪化させている企業は気になり、10%以上減益となった企業に対して、その要因および通期見通しの修正有無を決算短信などで調べてみました。
減益要因は大別して、①主力部門の不振、②人件費・物流費などのコスト増、③為替差損益の影響、といったところです。
投資分析に当たっては、これらの要因が一時的なものか、構造的なものかを見極める必要があります。
業績と株価動向
それでは中間決算の業績は、株価にどのような影響を与えているのでしょうか?
今年6月末と直近(12月13日)の株価を比較してみました。
これをみると、中間決算と株価動向は必ずしも連動しないことが分かります。例えば、中本パックスやヴィスのように好業績が株価上昇に寄与している会社、逆にランドコンピュータやジャックスのように収益悪化が株価下落につながっている会社などは、業績と株価の連動性がみられます。しかし、エレマテックのように減益にもかかわらず株価が上昇している会社や、日本空調サービスのように増益にもかかわらず株価が下落している会社もあり、これらの会社の株価は業績以外の要因によって動いていると考えられます。
企業業績と株価動向の連動性の低さから、企業業績分析(ファンダメンタルズ分析)では儲かる株が見つけにくいとの印象を持たれたかもしれません。しかし、短期的な要因により株価は上ブレも下ブレもしますが、長期的に見れば株価は業績に基づく企業価値に基づき変動しますので、長期投資にあたっては企業業績分析は欠かせないものになります。
所感
ここ10年来の企業業績の成長は、①デフレ不況のどん底にあえいだ業績が回復基調にあったこと、②持続的な円安に伴う輸出産業や海外子会社の好調、などの要因を裏付けとしていました。
しかしここ最近、人手不足や円安によるインフレが話題になっているように、日本企業を取り巻く環境が変化しているように感じます。特にデフレ基調からインフレ基調への転換、金融緩和政策の見直しが、これからの企業の成長要因を変えるものと考えています。
長期的な不況を乗り越えた日本企業の努力は素晴らしいと思います。ただし、今後さらなる成長を遂げるためには、新たな経営戦略が求められます。特にありあまった手元資金をどのように活用するのか。成長分野への積極投資か、株主への還元か。この経営戦略の巧拙がこれからの業績や株価に大きく影響します(いまに限らず、常にいえることではありますが)。実際に今回の中間決算においても、企業によって明暗がはっきりと分かれています。
「配当狙い投資」を実践している私としては、単に安定的な株主還元だけではなく、新環境に適応してインフレに負けない着実な成長を遂げる企業を選別しなければならず、そのような観点から安定成長企業を分析するつもりです。
※当記事は投資の推奨を目的としたものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。
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