日本の株価はバブルなのか ③ 海外売上高比率
2024年3月17日
前回バフェット指標を分析するなかで、台湾やスイスのように本国の経済規模に比べてグローバル企業が活躍する国については指標値が高くなることを指摘しました。
一方、日本企業についてもグローバル化が進んでいるといわれていますが、どれほどなのでしょうか。
日本企業の海外売上高比率(総計)
ネットで検索したものの、よいデータがなく自分で作成することにしました。
対象は東京証券取引所上場企業で、直近実績データを集計しています。「海外売上高」については、「売上高」に「海外売上高比率」を乗じて算出しています。また親子上場企業については特に調整を加えていません(ダブルカウントしています)。
結果は上記の通りです。
ひとつ残念だったのは、すべての企業が「海外売上高比率」を公開していないことです。非公表の企業は海外取引先がないという企業も多いのでしょうが、大手銀行やソフトバンクのように明らかに海外子会社を保有している企業もあります。
このような非公表企業の海外売上高はゼロとみなして集計したところ、日本企業の海外売上高比率は約36%となりました。非公表企業の分も含めることができれば、40%台になるものと推測されます。
ここから言えることは、日本企業の売上のうち少なくとも3分の1以上は海外売上に依存しているということです。すなわち、日本企業の業績は日本経済の景気に大きな影響を受けますが、世界経済の景気からも少なからず影響を受けることになります。
もうひとつ残念だったのは、過去のデータが集計できないところで、日本企業のグローバル化の進展度をお示しすることができません。おそらくは、停滞する日本経済に見切りをつけて海外進出する流れに加えて、ここ最近の円安による為替レート効果によって、海外売上高比率は大きく上昇しているものと考えられます。
日本企業の海外売上高比率(業種別)
せっかくデータを集めたので、業種別に集計しました(業種が多いので表を2つに分割しています)。先程と同様に、海外売上高比率を非公表とする企業についてはゼロとみなしています。
予想通りの結果ではあるものの、輸出産業の花形である「電気機器」「輸送用機器」は海外売上高比率が60%台と高くなっています。
他方、「建設業」「電気・ガス業」「陸運業」「小売業」「不動産業」など国内向けをメインとする業種については比率が低くなっています。
「卸売業」が約35%と比較的高いのは、大手商社がこのセクターに含まれていることが影響しています。
所感
今回の分析から、日本の株価の割高度を直接的に考察するのは難しいです。
ただし、海外売上高への依存度が35%以上と大きいことをふまえれば、「日本経済の低迷にもかかわらず日本企業が株高なのはバブルである」とは単純にいえないと思います。円安効果も含めた海外売上高の伸びが株高を支えている可能性があります。
逆にとらえれば、海外売上高の要因で日本の株価が暴落するリスクがあることも否めません。例えば、リーマンショック時のようにアメリカ発の金融危機に影響を受けるケースもあるし、急速な円高によって円ベースの海外売上高が縮小し株価に悪影響をもたらす可能性も十分に考えられます。
月並みな結論となりますが、投資にあたってはこのようなチャンスとリスクのうらはらな関係をよく理解しておくことが重要です。
蛇足です。
製造業との比較で、「情報・通信業」や「サービス業」の売上規模は小さく、海外売上高比率は10%台と低位にとどまっています。
機会があれば分析してみたいのですが、アメリカや中国などではこの両セクターの伸びが経済成長を支えているものと推測します。
日本においても、トヨタ自動車を凌駕するような世界的な巨人が両セクター(もしくはまったく新しいセクター)から出現することが日本経済復活のカギを握っているように思われます。