日経平均は日本の株式市場全体の動向を示す指数ではない
2025年11月9日
先月は日経平均の快進撃をみた1か月でした。
同指数は、10月1日始値※ 44,831.95 → 10月31日終値 52,411.34 と、16.91%もの上昇です。
※ちょうど10月1日に銘柄入替したこともあり、分析の都合上9月終値ではなく10月始値にしています。
翻って我が持ち株を眺めてみると、あまり値上がりをしたという実感がありません。
TOPIXの同時期の変動は、3,122.68 → 3,331.83 と6.7%の上昇で、こちらの方がまだ実感に合っています。
これは当たり前といえば当たり前のことです。
なぜなら、日経平均は日本の株式市場全体の動向を示す指数ではないからです。
日経平均は、日本市場を代表する優良企業 225社の株価に基づいて算出される指数であり、それ以外の企業の株価は反映していません。
それ以上に問題なのは、日経平均は基本的に株価でウエイト付けしていることです。
株価は、発行株式数を2倍にすれば半分になるように相対的な数値にすぎず、会社の実力を表す数値ではありません。これでは、株価の高い企業が実力以上のウエイトを与えられることになります。
一方で、時価総額に基づくウエイトであれば、時価総額は市場による企業価値評価額なので実力を表しているといえます。ちなみにTOPIXは時価総額でウエイト付けしています。
実際の数値をみてみましょう。
以下は2025年10月31日現在の日経平均ウエイト上位11社です。

1位であるアドバンテストの日経平均ウエイトは 11.89%。
例えば、アドバンテストの株価が 10%値上がりした場合に、以下の計算式により日経平均は 1.189%値上がりすることを意味しています(日経平均5万円のときは594円の寄与)。
値上がり率 10% × 日経平均ウエイト 11.89% = 日経平均値上がり率 1.189%
11位のソニーグループの株価が 10%値上がりしても、日経平均は 0.139%しか値上がりしません。
それでもウエイトの高い方であり、225社の平均ウエイトは 0.44% (= 1 / 225 ) なので、平均的な企業の株価が10%値上がりしても日経平均の値上がりは 0.044%に過ぎません(日経平均5万円のときは594円の寄与)。
ちなみに日経平均ウエイトの最も低いのが三菱自動車で、その数値は 0.0024% (アドバンテストの約5,000分の1!!)。日経平均が5万円のとき同社の株価が10%値上がりしても 0.12円しか寄与せず、もはや同社を日経平均に組み入れている意味はほとんどないように思えます。
前述の通り、時価総額に基づくウエイトであれば各企業の実力を表していると言えます。上記の表の一番右の列に、各社の時価総額の日経平均時価総額総計に占める割合を表示しました。
それでは日経平均ウエイトと時価総額ウエイトを比較してみましょう。
1位アドバンテストの時価総額ウエイトは 2.08%。日経平均ウエイトは 11.89%だったので、実力の5倍以上のウエイトが置かれているということになります。
逆に、11位のソニーグループの時価総額ウエイトは 3.12%。日経平均ウエイトは 1.39%なので、実力の半分以下にしかウエイトが置かれいません。
時価総額トップであるトヨタ自動車の時価総額ウエイトが 5.81%に対して日経平均ウエイトは 1.01%と、過小評価です。
なお、上記の表で上位11社と中途半端な社数にしたのは、この11社だけで日経平均ウエイトの合計の約50%(49.72%)を占めるためです。一方で、これら11社の時価総額ウエイトは合計は 19.03%なので、やはり両ウエイトの乖離が目立ちます。
日経平均のウエイトに問題があるとしても、225社が同じような値動きをしているならば問題が顕在化することはありません。
ところが、先月この問題が顕在化しました。
AI投資への期待から、アドバンテストが 56.85%、ソフトバンクが 44.42%の爆騰。ファーストリテイリングも好決算から 26.64%の値上がりと好調。これら日経平均ウエイトの高い銘柄の寄与により、日経平均は 16.91%と大きく値上がりしました。
一方で他の銘柄の成績はというと・・・
日経平均の上昇率 16.91%を上回る値上がりをしたのは 27社(全体の12%)のみ。逆にいえば 198社(同 88%)は日経平均ほどは値上がりしていません。76社(同 34%)はかえって値下がりしています。225社の値上がり率の単純平均は 5.10%と日経平均には遠く及びません。
これらの結果から、日経平均は日本株式市場の全体の動きを示すものではないだけではなく、対象225社の平均的な値動きを示す指標ですらない、と言えるでしょう。
今回かなりクドクドと日経平均の問題点を書き並べたのは、「配当狙い投資」を行っている自分が日経平均を参照しても、無益どころか有害であると気づかされたからです。
キャピタルゲイン狙いではないので相場動向は自分にまったく無関係とまでは言い切れず、長期安定成長企業に投資している以上は市場平均よりも値上がりしてもらいという期待をいただきながら株価指数をみています。
ところが先月のように日経平均は大きく値上がりしているにも係わらず、自分の持ち株があまり値上がりしない、それどころか値下がりをしている、という状況はかなりのストレスを感じていました。だからといって、いまさら方針を変えてアドバンテストやソフトバンクに投資をするわけにもいきません。となれば、日経平均をウォッチしていても投資判断の益には立たず、時々ストレスを感じるだけ有害である、というわけです。
今回を教訓に、今後日本株の指標としてはTOPIXのみをウォッチしていくつもりです。
とはいえ、株価指数といえば日経平均、と長年洗脳されてきたので頭を切り替えられるのか・・・。
※当記事は投資の推奨を目的としたものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。
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