いわゆる推奨銘柄について
● 私の失敗談
知り合いに推奨銘柄を尋ねられることが時々あります。
普段はお茶を濁しているのですが、そのときは酔った勢いもあり一番注目していた銘柄を答えました。
早速、知り合いはその銘柄を購入したのですが、直後に不採算事業による赤字が発表され、株価は大きく下落しました。
さすがに責任を感じ、深く反省しました。
なにがいけなかったのか・・・
● 推奨銘柄はあてになるのか
さて、雑誌やインターネットでは盛んに推奨銘柄の記事が載っております。読むと、その企業がいかに好材料をもっており、今後の成長が見込めるか、といったことが書かれています。購入銘柄に迷っているときには、ついその記事の内容を頼りにしたくなります。
しかし、一歩立ち止まり、前回述べた投資対象が値上がりするための条件「他の投資家が後から割安だということに気づき買いを入れること」を思い出してください。
「好材料があるなら、なぜ他の投資家は手を出していないのか」
「割安であるというのは本当だったとして、他の投資家はこの後買いを入れてくれるか」
・・・推奨銘柄を選定した人は、もちろん真剣に分析した結果をもって割安と判断しているのでしょうが、投資家がその判断に同調するかどうかは別の話です。
一例として、よくあるのがクリーンエネルギー、ドローン、生成AIなど新規分野に関連する銘柄の推奨です。他の投資家もその情報を得ているなか、どうしたら更なる買いが集まるのか? 新規分野関連銘柄とはいってもライバルも多く勝ち残れるか分からないので、もう少し確実な情報が得られるまで様子見をしているかもしれません。だとすれば、それに先回りをして買入するということは、その企業が新規分野から撤退するリスクを抱え込むことになります。
もっとも投資家は思惑で動きますので、「新規分野で成功した」というニュースの以前に、「新規分野で画期的な技術を持っている」→「これから他の投資家が買いを入れる可能性が高い」→「先回りして買入しよう」という理屈で値段が上がることもよくあります。さらには、いざ新規分野で成功となると、好材料出尽くしということでかえって値下がりすることもあります。
つまり、市場価格は投資家の思惑が複雑に絡み合って形成されており、新規分野関連銘柄だから近い将来値上がりするとは単純にはいきません。投資をする場合でも、その企業が新規分野で成功する可能性、成功した場合の業績に与える影響度、そしてこれまでの投資家動向などをしっかり分析する必要があります。
なお、投資家の思惑と株価の関係については、イギリスの経済学者・ケインズが「美人投票」という面白い例え話をしていますので、回を改めて紹介したいと思います。
● 推奨銘柄情報の利用方法
それでは推奨銘柄に関する情報がまったく無益かと言えばそんなことはなく、新しい企業を知るきっかけになります。私も、世にはこのような企業があり、こんなビジネスモデルや技術を持っているのだ、と見聞を広めるためによく目を通しています(実際にその銘柄を購入することは滅多にありませんが)。
推奨銘柄をみてやみくもに飛びつくのではなく、自分なりの評価基準を持っておき、興味がある銘柄があればその基準で評価を行い、それで割安と判断すれば購入する、ということであれば失敗は少なくなるでしょう。
● 私の失敗談(続)
さて冒頭の私の話に戻ります。なにがいけなかったのか?
私は個別株だけでなくETF、REITも含めて約50銘柄に分散投資しています。1銘柄だけみても将来の動向は不確実なため、分散によりリスクを軽減させるという投資手法です。結果、値上がりする銘柄もあれば値下がりする銘柄もあるのですが、トータルで利益を出せることが多いです。
冒頭にあげた赤字転落企業に関しては、私自身も痛手を被りましたが、50分の1であるので全体から見たらさほどの痛みはありませんでした。
もし、その銘柄が確実に値上がりすると分かっていれば、そこに集中投資しています。分からないからこそ分散投資という投資手法を取っているわけです。にもかかわらず1銘柄だけ取り出して推奨したのは不適切だった、さらにいえば自分なりの投資手法を身につけるが先決とアドバイスすべきであった、と反省しております。
他人から学ぶべきは推奨銘柄ではなく投資手法だと、意を新たにしました。