スクリーニング銘柄(2025年)の年間成績

2026年6月

昨年6月、配当狙い投資のための長期安定成長企業をスクリーニングした41銘柄を公開しました。
この類の銘柄リストはネットや雑誌でよく見かけるものの、そこに投資していたらどのような結果になったのか、事後検証されているのをほとんど見ません。言いっぱなしは無責任ですし、また検証結果をふまえた反省がなければ改善もありません。
そのように考え、今年も2026年3月決算が出そろったこのタイミングで当スクリーニング銘柄のこの一年間における成績について検証します。ここで検証は、業績面と投資パフォーマンス面の2つの側面から行いました。

◎業績検証

銘柄スクリーニングにあたり、業績が長期にわたり安定的に成長している点を重視しているので、直近の決算および来期の予想決算において業績が実際に成長しているかを検証する必要があります。ここでは以下のとおり4項目を分析しました。

今期決算(対前期比)
今期決算(2025年4月末~2026年3月末)において、売上高・営業利益・当期利益が対前期比でどの程度変動したかを示しました。下記の表の各セルにおいて、増加していればピンク、減少していればブルーに色付けしています。
売上に関してはピンクのセルが多く、大半の企業において増収であったことが分かります。一方で、全39社※のうち営業利益は17社、当期利益は13社が減益となっており、物価高の影響等が現れています。平均値で見ると、売上高 +5.0%営業利益 +3.7%当期利益 +3.4%全般的に業績は伸びているものの2024年度に比べると鈍化しています。
 ※上場廃止のため2026年3月期決算を公表していないランドコンピュータ、太平洋工業を除く(以下同じ)

② 来期予想(対今期比)
各社の公表する来期決算予想に基づき変動率を計算しました。
中東情勢や物価高が不安材料であるものの、トランプ関税ショックの影響を受けた今期よりは楽観的な予想が多くなっています。全39社のうち売上高は35社、営業利益は32社が増収増益予想です。一方、当期利益に関しては増益見込みは22社とやや控えめです。。平均値で見ると、売上高 +6.9%、営業利益 +7.2%、当期利益 14.8%今期よりは改善することを見込んでいます。

③安定成長スコア
①②の決算データの更新を受け、スコアがどの程度変化したのかを示しました。ただし、このスコアは長期的な決算データに基づいて計算しているため、今回2期分のデータ更新ではスコアはあまり変動しません。1年前の公開時には小数点以下を四捨五入して整数化していたのですが、それではほとんどスコアが動かないので、ここでは動きがみえるように小数点第一位で丸めています。
そして各社の変動をみると、スコアがほぼ横ばいの企業が多いのですが、今期実績および来期見込みで減益となっている企業はスコアを落としています。

④増配率
配当金狙い投資において最も望ましいのは株価上昇ではなく増配です。さらに昨今の物価高を考慮すれば、インフレ率以上に増配してくれないと配当金の実質的な目減りとなります。
では対象銘柄の成績はというと、今期実績・来期予想ともにほとんどのセルがピンク色、平均値で見ても今期実績 +10.7%、来期予想 +7.6%これらの企業が増配を積極的に行っていることを示しています。

⑤ 今期減益となった企業とその要因

これらの企業は、業績が長期的に安定成長しているという視点で選別しています。にもかかわらず業績が低下してしまった企業については、その要因を探り、スクリーニング精度の改善に努めなければなりません。
そこで、当期利益が減少した今期当期利益が減少した13社について、決算短信や決算説明会資料から減益要因を調べてみました。

一通り調べたところで、一部の企業の開示内容について以下の不満を覚えました。
 ① 「先行投資」を理由としている場合に、投資目的・期待リターン・想定リスク等が具体的に示されていない
 ② 複数の要因が存在する場合に、それぞれの要因が減益にどの程度の寄与度か示されていない

①に関し、企業活動においてリターンを得るためにリスクを取らなければいけないので、時に先行投資が必要となることは理解できます。しかし、投資に伴うリスク・リターンはどの程度か、リスク軽減のためにどのような策を講じているか等を明示することは、株主から預かった資金で投資をしている企業としての説明責任と考えます。

②に関し、各要因の寄与度がわからないと、企業が抱えるリスクやそれに対する企業の対応策を正当に評価することができません。多くの企業ではウォーターフォールチャートによって利益の増益・減益要因を分解して示しており、未実施の企業はぜひ導入してもらいたいところです。さらにいえば、導入済みの企業においても、多くは営業利益のみを分析対象としています。しかし、投資家に最終的に帰属する当期利益についても対象としてもらえると、より有益な情報が得られます。

どんな企業でも常に順調とはいかず業績低迷に陥ることもあるでしょう。重要なのは、そのようなときに低迷した状態に正面から向き合い、原因の究明と対策の策定に取り組むこと、そしてそれを隠さずに開示すること、と考えます。調子のいいことをいってごまかそうとする企業は、結局のところ市場からの信頼を失ってしまいます。
開示内容の充実度について、今後対象企業の定性的評価に加えたいと思います。

投資パフォーマンス検証

配当狙い投資は長期保有を前提としているとはいえ、投資の一つである以上そのパフォーマンスを定期的に検証する必要があります。ここでは2025年5月末に投資した場合の1年間の投資パフォーマンスを計算しました。

①株価騰落率(キャピタルゲイン)
配当狙い投資は長期保有が基本であり、キャピタルゲインを目指すものでありません。それでも、必要に応じ換金する場合を想定すれば、株価は値上がりするに越したことはありません。
対象銘柄の実績をみると、バルカーの+166.7%から学情の + 4.4%までまちまちです。株価を下げている3銘柄のうち、学情、クミアイ化学工業については今期減益です。残るコンドーテックについては今期実績・来期予想ともに増収増益であり、株価が下落したのが不思議です。
平均値は +28.4%と好調でしたが、日経平均の +74.7%はもちろんTOPIXの +41.2%にも遠く及びませんでした。

②実績配当率(インカムゲイン)
今期における1株当り実績配当金を2025年5月末の株価で割って計算しました。予想配当利回り3.5%以上をスクリーニング条件にしていたため、各銘柄とも実績配当率は総じて高く平均して 4.4%です。そしてこの配当率は、東証プライム企業の 2.4%、日経平均の 2.1%を大きく上回っています(高利回りで安定した配当金収入が、配当狙い投資の一番の目的なので当たり前といえば当たり前の結果ではありますが)。

③総合収益率(キャピタルゲイン+インカムゲイン)
①と②を合算した総合収益率は、平均 +32.9%とまずまずの水準でした。ただし、銘柄によるバラつきが大きいことに留意が必要です。

この後、最新データに基づく再スクリーニングと、それにより抽出された銘柄の個別分析を順次行っていく予定です。当スクリーニングを参照されている皆さまには、少しお時間をいただければと思います。

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